生まれ育った街や住んだことのある街が映画の舞台になるってワクワクする。
映画「坂道のアポロン」は長崎県佐世保市が舞台。私は佐世保に4年ほど住んでいたことがあり、生まれ育った長崎市とまた違う雰囲気の街が気に入っていた。その佐世保のロケーションや文化的な背景を含めて映画作品に残ることは大変嬉しいことである。
映画が公開されたら絶対に見に行こう!と思っていたのにあれよあれよと時は過ぎ、気づいたら劇場公開もそろそろ終わりそう…って頃になってようやく映画館に足を運ぶこととなった。
正直言ってもっと早く観に行っておけばよかった…と思うほど好きな作品だったし、音楽を愛する人たちにはぜひ見てほしい映画だったので感想(という名のメモ)を残しておきたい。ネタバレ含みます。
あらすじ
父を亡くし、長崎県・佐世保の親戚に預けられた薫(知念侑李)は、転校先の高校で不良の千太郎(中川大志)とその幼馴染の律子(小松菜奈)と出会う。千太郎が叩くドラムとジャズに魅せられ、ピアノとドラムでセッションしていくうちに友情を育み、やがて律子に恋心を抱いていく。
いきいきと描かれる人間関係
映画「坂道のアポロン」では、薫・千太郎・律子とその周りの人々が織りなす人間関係がみずみずしく描かれている。
友情・恋・家族との関係…。青春映画にありがちな話かと思いきや、一つ一つのエピソードがとても丁寧な流れになっているのと、俳優陣の確かな演技力が説得力を持たせている。
1960年代という時代にある物質的な不便さと登場人物たちのピュアさ。観客ウケを狙った派手なシーンはあまりないが、全体を流れる穏やかで温かい雰囲気がなんとも心地よかった。
とにかく演奏シーンが素晴らしい
この映画の見どころは何をおいても演奏シーンに尽きる。家で弾くピアノも、地下室やジャズバー、文化祭、教会でのセッションも、勢いと迫力がある。
メインの薫と千太郎だけでなく、淳一(ディーン・フジオカ)のトランペットや、律子の父(中村梅雀)のウッドベースにも目が釘付けになるほどのエネルギーが伝わってくる。何なら文化祭での星児(松村北斗)率いるバンドのグループサウンズ感/文化祭感も絶妙なのだ。
さすがに音は吹き替えのようだが、ピアノの指使いやドラムのバチさばきは見事なものだ。めちゃくちゃ練習したんだろうなあというのを感じさせないくらい、気持ちよく演奏を楽しんでいるようにしか見えないのがさらにすごい。
演奏シーンはこの映画の核になる部分でもあり、ここがしっかり描かれていたことで作品全体のクオリティが保証されたとも言える。
方言のセリフ回しが見事
特筆すべきなのが、演者が話す長崎弁(佐世保弁)に違和感がないという点。わたし自身長崎出身であるが、語尾の「~ばい」「~ね」「~とよ」などのイントネーションや使う語彙は地元の人間が使うものと同じであり、ちゃんと方言指導が機能しているのに感心した。
特に千太郎は、地元のやんちゃな男子っぽさがセリフからも感じられるし、洗練されていないガサツで田舎者っぽい部分もセリフの言い回しから存分に出ていたと思う。
おわりに
映画「坂道のアポロン」はもう公開が終わっている劇場が多いとは思うが、映画館の大きなスクリーンと音圧で見てほしい作品である。音楽を題材にした映画は数あれど、音楽・人間模様・舞台となる街の良さを同時にバランスよく楽しめる作品としてとても推せる映画だ。
序盤からキャスト・スタッフの本気が伝わってきて見た後に心があったかくなる「坂道のアポロン」、ちゃんと評価されないと私が許さないぞ…!という気持ち。
https://twitter.com/miyamachronicle/status/985157366332080128
https://twitter.com/miyamachronicle/status/985157366332080128
たぶんもうすぐ劇場公開も終わると思うので、まだ観てない方はぜひ映画館のスクリーンと音響で #坂道のアポロン を観てほしい。音楽の楽しさとか友情のアツさとか家庭での居場所についてとか淡い恋模様とかがいい塩梅で絡んでくるから…!騙されたと思って観てくれ……!
— みやま (@miyamachronicle) 2018年4月14日
▼映画ノベライズ本
▼原作マンガ